N氏の予定滞在期間は6日間。その間の4日間を交易会の視察にあてているそうだ。
はじめに向かったところは自転車の展示ブースだ。およそ50近くの出展というところだろうか。 N氏はその中でも最近取引を開始し商売も順調に推移している出展企業のところに出掛け商談を開始した。
先方の企業もN氏とは旧知の間柄という風にさかんに新商品の説明に入ったが、N氏はあまりそういったことには関心はないらしく、日本の国情にあった製品作りをしてほしいということを訴えていた。 具体的には品質管理だ。中国の品質レベルはまだまだ日本には遠く及ばず、自転車などもわりと錆が発生しやすいらしいのだ。日本ではそれが大きな問題なのだが中国サイドではそれほどのこととは受け取られていないようなのだ。
長年この広州交易会を利用し取引の場を広げていったN氏にとっての交易会は新商品開拓の場であると同時に取引先との打ち合わせの場でもあるわけだ。 日本国内の卸先や小売店レベルから上がってきたクレームをメーカーに伝えることなども重要な業務というわけだ。
ここで、N氏と出展社とのコミュニケーション風景について少しお話ししたいと思う。 つまり実際の商談がどのように進められているかだが、N氏は中国語はできないし一緒にいる社員も中国語はできない。そのため先ずN氏の言葉を社員が英語に訳し現地の代理店に伝える。それを彼が中国語に訳し、出展者に伝えることになる。出展者からの話はその逆の流れだ。つまりN氏の話を伝えるためには間に二人の通訳者が入ることになるので、ちょっとこみ入った話、例えばクレームを伝えるなどの立場の違いを説明する場合などは結構苦労している様子だった。
N氏もそこらへんの事情はよく分かっているらしく、中国とビジネスを開始するに当たってもっとも重要で大切だったのはこちら(日本)の事情がよく分かり、なおかつ中国ビジネス社会に広い人脈をもつ代理人を探すことだったと言っている。この優秀な代理人なしには中国とのビジネスは進めることができないそうだ。
筆者などは日本から中国語の分かる人間を連れていきその場で直接商談を進めていった方がむしろ良いだろうにと思ったりするのだがそれではうまくいかないというのがN氏の意見だ。 というのも彼は決してその場で仕入れを決定するわけではなく、見本市へ出掛けるのはあくまで視察であり、仕入れ価格を調査するのが目的だというのだ。そうして見つけた掘り出し物の仕入れ交渉は日本に帰ってからその代理人を通して行うのだそうだ。現場で価格を決めることはないのだ。
そのためその後の全ての交渉は日本から代理人を通じて行われることになり、意志の疎通がうまく図れないと何もできないことになってしまうのだ。
そうこうしているうちにあっという間にお昼になってしまったが食事の席を確保するのはほぼ不可能だ。臨時の屋台等がたくさん店を出しているが、食事にはありつけても座る場所はない。仕方なく階段やあまったスペースに腰を落ち着けることになる。 対策としてはホテルで充分な朝食をとっておくことにつきる。
N氏の商談時間は一社あたりおよそ一時間ほどだろうか。そのため一日で回れるのはせいぜいが8-10社だ。毎年毎年面白い発見があり、もっともっと回ってみたいとのことだがこの人混みと海外での商談ということを考えると限界とも言える。
会場を後にし、ホテルに帰ってからテレビをつけるとちょうど交易会の様子を流していた。アナウンサーによると今回は最高の人出であり、今後もIT関連を中心により大きな見本市へと発展させていくとの。 輸出に力を入れる中国の意気込みが感じられる談話だ。
もともと現金問屋一筋だったN氏がこうした輸入ビジネスに参入したのは僅か3年前とのことだが今では売上の3割を占めるまでになっているそうだ。もちろん来年の春の交易会にも出掛けるとのこと。 N氏いわく、もっと早くからやっていれば良かった。
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